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2010年6月20日 XBRRの快感 |
鈴鹿のバックストレート。250km/hを超えるスピードでも、エリック・ビューエルが3日間徹夜の風洞実験をして造り上げたというその特徴的なカウルの中に身を潜り込ませると、ピタリとヘルメットの揺れが収まった。頭が安定すると、今度は強烈な加速感がやってくる。両方の目が頭に強く押し付けられ、さらに左右に広がってしまうようだ。タコメーターの針は、OHVの限界と思える8,000回転を軽々と越え、さらに上昇していく。XBRR・・・これはまぎれもなくOHV史上最強のマシンだ。 ストレートエンドで回転が上がり過ぎるので、ファイナルを2丁ロングに換えてみた。これで8,000回転、5速255km/hというセッティングになる。他にも1本目の練習走行では、新品に換えたカーボンブレーキパッドにしっかりと熱を加える作業をしておいた。このカーボンブレーキパッドはカーボン成分を溶かしてステンレスローターにコーティングさせないと本来の効きが期待できないのだ。こうして準備の整ったところで、XBRRの性格を探るようにペースアップ。排気音は静か。むしろ一緒に走行した水冷のビューエルレーサー・1125Rの方がうるさいくらい。7,000回転を超えると、目の前に伸びる2本のインテークからのラム圧が効きだし、ターボ車のようにさらに加速しだすXBRR。いままでXB12Rでレースをしてきて、鈴鹿のストレートというのはゆっくりと上昇するタコメーターの針を見ながら「じりじりと我慢する時間」だったのだが、こいつの加速といったら・・・。 XBRRの強烈な加速とスピードの代償として、受け入れなければならないのが高圧縮比のエンジンが吐き出すとんでもない発熱量。高温になった砂型のプライマリーケースに当たる左足のブーツが黒く焦げてくる。カウルの内側から上がってくる熱で両腕が熱い。エンジン温度は180℃以上。そして3周も走ると強烈な発熱を起こし、インジェクションのタイミングがワンテンポ遅れてくる。その遅れ具合を解釈し、ライダーの方がスロットルタイミングを調整しなくてはいけないのが特別感じられた。また、基本的に「高回転」エンジンなので、常に高回転をキープするというOHVエンジンらしからぬ特殊な乗り方も要求される。私はXR12Rに乗り、このバトルフィールドで過去3度優勝しているが、それは、低速トルク型エンジンの特性を生かしてスピードに乗せるライディングに長けていたからだと思う。XBRRはそんなビューエルの乗り方が通用しない、どちらかといえば国産4気筒マシンのようなスピードの乗せ方をしなければいけなかった。 しかし、それら特殊な点があってもなお、このXBRRの信じられない加速とスピードは楽しいし、やみつきになる。スロットルをひねると、豆粒のようだった前走車が恐ろしい勢いで大きくなり、気をつけていないと追突しそうなる。私はストレートを走っていて思わず声を出して笑ってしまった。S1ライトニングから始まってXB12Rまでずっとビューエルにこだわってレースを続けてきた私にとって、最高のOHVに出会えた気分だった。そして、賞典外とはいえ、わずか50台しか生産されず、ハーレーダビッドソンジャパンにも2台しか残っていないこのXBRRでレースができたことは、とても貴重で感動的な経験だった。この機会を与えていただいた全ての皆様に深く感謝したい。 この記事はビューエル・モーターサイクルジャパン公式サイトのブログでも掲載されております。 ★AMA育ちのモンスターマシン「XBRR」!!! 〜〜ビューエルモーターサイクルジャパン・公式ブログへのリンク〜〜
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